退化していると感じたら…

 
須賀です。

「深海魚」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

僕が思い浮かぶのは、
目がやたらにデカイか、
目が退化してなくなっているか、
どっちかのイメージ。

深海になればなるほど太陽の光が届かないので、
ほんの少しの光を感知できるように、
目が大きくなるか、その反対に、目の機能を無くし、
他の機能にエネルギーを配分するか。

どちらかを選ぶようになっているようです。

で、このとき、目を無くすほうを選択した生物は
目を「退化」させた、と表現することがあります。

でも、この「退化」という言葉、進化生物学の
中にはないんだそう。

むしろ、これもひとつの「進化」なのだとか。

進化という言葉の定義の問題なのですが、
これ、つまりは「環境に適応する」こと
なのだそう。

いままでの環境から新しい環境に移り、
そこに適応することを進化という。

だから、深海で目の機能を使わなくして
他の機能にエネルギーを振り分けていって
生存しつづけていくことは進化なのです。

この話を聞かせてくれたのは、
東京大学大学院情報学環教授で
理化学研究所革新知能統合研究センター チームリーダー
の佐倉統さん、という方。

『進化論とAI
 ~AIが社会基盤となるからこそ必要であろう叡智、
 今残すべき叡智とは?~』
というタイトルのセミナーの一部でのお話。

佐倉さん、もともとの専攻が進化生物学で、
その後に科学技術と社会の関係についての研究考察に
専門を移しているとのこと。

お話の中で他に興味深かったのは、
機械と人との関わり方の部分。

ポケベルが普及しはじめたときのこと、
当初はポケベルって、相手の電話番号だけが
表示される設定だったのだそう。

誰かからポケベルに着信があったら、
公衆電話でかけ直す、という流れ。

で、この「番号」の表示機能をうまく活かして、
当時の女子高生は数字の組み合わせによる
コミュニケーション方法を考案したのだとか。

0833なら「おやすみ」という意味になる、
など、数字と意味の対応表があったのですね。

これのどこが興味深いのか?というと、
当初、開発者としては電話番号が表示されれば
OKと思っていたところ、ユーザー側で、もっと
一歩すすんだ利用法が考え出されて、それが
一気に普及していったところ。

技術革新とかって、開発者の側から一方的に
提供されるものではなくて、ユーザー側の
使い方によって、技術の側ももっと進むんだ、
ということなのだそうです。

ここからAIの話につながるのですが、
活用の仕方が西洋と日本とでスタンスが違う、
みたいなこともあってこれはこれで興味深い。

テクノアニミズム、なんて言葉もあるそうで、
面白いのは、自分のパソコンに愛称をつけると
生産性が上がる、なんて研究結果もあるそう。

ただの機械を扱っているのではなく、
パートナーとして共同作業してる、
みたいな感覚になれるのかもしれません。

他にもいろいろあるのですが、
最初の話に戻って、退化について。

例えば、スマホなどの予測変換によって、
漢字を記憶する能力が退化した?と感じたり
するかもしれません。

でも、これはスマホを使っている環境に
適応していると考えれば進化なのです。

他にも、あれができなくなった、とか、
これがうまくいかない、とか、いろいろあるかも
しれませんが、それらも全部、環境への適応による
進化と考えてみるとどうでしょうか?

年齢のせいとか考える癖のついている人も
いるかもしれませんが、そうじゃないってことですね。

お腹まわりが気になるのは年齢による退化ではなく、
あなたが今の環境に適応した進化だということ。

ってことは、環境がすべてを握っている気がします。

自分をどのような方向に向かわせるのか?

向かいたい環境に身を投じれば、
そこでふさわしい行動をするようになり、
いつの間にか進化して適応することになる。

だとしたら、どんな環境を選択するのか?

考える価値がありますね。

では、また。

 

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